アメリカ合衆国に映画が誕生して100年ですってね、しかしたかだか100年ですかね、もっと歴史があるような気がしていましたが。 それでこのたびアメリカ映画協会（AFI, American Film Institute）がアンケートを実施したそうです。 1,500人の映画人にアンケートを募りました。 対象となる約400の役どころについて投票したそうです。 100年のアメリカ映画の歴史の中で、「英雄」と「悪党」をそれぞれ選んだのでしょうね、映画監督とか俳優とか映画批評家とか業界の人々が1,500人。 100年間ずーっと映画見てた人いないでしょうから、記録として残してあるフィルム・アルバムとかを勿論見たんでしょうね。 あるいは記憶だけの判断でしょうか。
英雄とか悪党とか云っても、もちろん映画の中での役どころに対してですから、本人そのもののキャラクターではありません。 なかには、人間でないキャラクターも含まれています。 アメリカ映画の懐の深さでしょうか、それともアメリカ人のユーモアのなせる技でしょうか。 こんなアンケート日本映画でもやってるんでしょうかね、興味はありませんが。
それでは先ず「英雄」からご紹介いたしましょう。 1位は「アラバマ物語」(To Kill a Mockingbird, 1962)のアティカス・フィンチ（グレゴリー・ペック）です。 妻を亡くし、娘や息子を男手ひとつで育てる弁護士が、人種差別のはげしい南部で白人女性をレイプしたとして訴えられた黒人男性を弁護しました。 2位は「失われたアーク」(Raiders of the Lost Ark,1981)のインディー・ジョーンズ（ハリソン・フォード）です。 そして3位はなんと「007/ドクター・ノオ」(Dr. No, 1962)のジェームズ・ボンド（ショーン・コネリー）です。 4位は「カサブランカ」(Casablanca, 1942)のリック、リック・ブレイン、云わずと知れたハンフリー・ボガードですね。 5位は「真昼の決闘」(High Noon, 1952)のゲーリー・クーパー演じますところの、ウィル・ケーンです。 ウィル・ケーンは結婚してもう保安官なんか辞めたかったのに、いやいや闘ったんでしたね。
6位「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs, 1991)のクラリス・スターリング（ジョディー・フォスター）、7位「ロッキー」(Rocky, 1976) のロッキー・バルボア（シルベスター・スタローン）、8位「エイリアン2」(Aliens, 1986)のエレン・リプリー（シガニー・ウィーバー）、9位「素晴らしき哉、人生！」(It's a Wonderful Life, 1946)のジョージ・ベイリー（ジェームズ・スチュアート）、10位「アラビアのロレンス」(Lawrence of Arabia)のT.E.ローレンス（ピーター・オトゥール）。
11位「スミス都へ行く」(Mr. Smith Goes to Washington, 1939) ジェファーソン・スミス（ジェームズ・スチュアート）、12位「怒りの葡萄」(The Grapes of Wrath, 1940) トム・ジョード（ヘンリー・フォンダ）、13位「シンドラーのリスト」(Schindler's List, 1993) オスカー・シンドラー（リーアム・ニーソン）、14位「スター・ウォーズ」(Star Wars, 1977) ハン・ソロ（ハリソン・フォード）、15位「ノーマ・レイ」(Norma Rae, 1979) ノーマ・レイ・ウェブスター（サリー・フィールド）
16位「シェーン」(Shane, 1953) シェーン（アラン・ラッド）、17位「ダーティー・ハリー」(Dirty Harry, 1971) ハリー・キャラハン（クリント・イーストウッド）、18位「ロビン・フッドの冒険」(The Adventures of Robin Hood, 1938) ロビン・フッド（エロール・フリン）、19位「夜の大走査線」(In the Heat of the Night, 1967) バージル・ティッブス（シドニー・ポワチエ）、20位「明日に向って撃て！」(Butch Cassidy and the Sundance Kid, 1969) ブッチ・キャシディ & サンダンス・キッド（ポール・ニューマン ＆ ロバート・レッドフォード）
21位「ガンジー」(Gandhi, 1982) マハトマ・ガンジー（ベン・キングスレー）、22位「スパルタカス」(Spartacus, 1960) スパルタカス（カーク・ダグラス）、23位「波止場」(On the Waterfront, 1954) テリー・マロイ（マーロン・ブランド）、24位「テルマ ＆ ルイーズ」(Thelma and Louise, 1991) テルマ・ディッカーソン & ルイーズ・ソウヤー（ジーナ・デイビス & スーザン・サランドン）、25位「打撃王」(The Pride of the Yankees, 1942) ルー・ゲーリック（ゲイリー・クーパー）
26位「スーパーマン」(Superman, 1978) スーパーマン（クリストファー・リーブ）、27位「大統領の陰謀」(All the President's Men, 1976) ボブ・ウッドワード & カール・バースタイン（ロバート・レッドフォード & ダスティン・ホフマン）、28位「十二人の怒れる男」(12 Angry Men, 1957) 第8陪審員（ヘンリー・フォンダ）、29位「パットン大戦車軍団」(Patton, 1970) ジョージ・パットン将軍（ジョージ・Ｃ・スコット）、30位「暴力脱獄」(Cool Hand Luke, 1967) ルーク・ジャクソン（ポール・ニューマン）
31位「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich, 2000) エリン・ブロコビッチ（ジュリア・ロバーツ）、32位「三つ数えろ」(The Big Sleep, 1946) フリップ・マーロウ（ハンフリー・ボガート）、33位「ファーゴ」(Fargo, 1996) マージ・ガンダーソン（フランシス・マクドーマンド）、34位「類人猿ターザン」(Tarzan the Ape Man, 1932) ターザン（ジョニー・ワイズミューラー）、35位「ヨーク軍曹」(Sergeant York, 1941) アルビン.C.ヨーク（ゲイリー・クーパー）
36位「勇気ある追跡」(True Grit, 1969) ルースター・コグバーン（ジョン・ウェイン）、37位「スター・ウォーズ」(Star Wars, 1977) ベン・オビワン・ケノービ（アレック・ギネス）、38位「街の灯」(City Lights, 1931) 浮浪者（チャールズ・チャップリン）、39位「名犬ラッシー/家路」(Lassie Come Home, 1943) ラッシー（仲良しの犬）、40位「セルピコ」(Serpico, 1973) フランク・セルピコ（アル・パチーノ）
41位「チップス先生さようなら」(Goodbye, Mr. Chips, 1939) アーサー・チッピング（ロバート・ドーナット）、42位「少年の町」(Boys Town, 1938) エドワード・フラナガン神父（スペンサー・トレイシー）、43位「十戒」(The Ten Commandments, 1956) モーゼ（チャールトン・ヘストン）、44位「フレンチ・コネクション」(The French Connection, 1971) ジミー・ポパイ・ドイル（ジーン・ハックマン）、45位「快傑ゾロ」(The Mark of Zorro, 1940) ゾロ（タイロン・パワー）
46位「バットマン」(Batman, 1989) バットマン（マイケル・キートン）、47位「シルクウッド」(Silkwood, 1983) カレン・シルクウッド（メリル・ストリープ）、48位「ターミネーター２」(Terminator 2: Judgment Day, 1991) ターミネーター（アーノルド・シュワルツェネッガー）、49位「フィラデルフィア」(Philadelphia, 1993) アンドリュー・ベケット（トム・ハンクス）、50位「グラディエーター」(Gladiator, 2000) マキスマス（ラッセル・クロウ）
さて次は「悪党50傑」です。 1位は当然でしょうか、「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs, 1991) のハンニバル・レクター（アンソニー・ホプキンス）でした。 2位はあの「サイコ」(Psycho, 1960) のノーマン・ベイツ（アンソニー・パーキンス）です。 3位には何故か「スター・ウォーズ帝国の逆襲」(The Empire Strikes Back, 1980) のダース・ベイダー（デイビッド・プラウズ、声優ジェームズ・アール・ジョーンズ）が選ばれています。 そして4位は「オズの魔法使」(The Wizard of Oz, 1939) の西の魔女（マーガレット・ハミルトン）で、5位に「カッコーの巣の上で」(One Flew Over the Cuckoo's Nest, 1975) の、あの女性看護師ラチェッド（ルイーズ・フレッチャー）が入りました。 彼女ホントに悪役に徹しましたね、それだけにあの作品アカデミー賞主要5部門をかっさらいましたね。
6位「素晴らしき哉、人生！」(It's a Wonderful Life, 1946) ポッター氏（ライオネル・バリモア）、7位「危険な情事」(Fatal Attraction, 1987) アレックス・フォレスト（グレン・クロース）、8位「深夜の告白」(Double Indemnity, 1937) フィリス・ディートリクソン（バーバラ・スタンウィック）、9位「エクソシスト」(The Exorcist, 1973) リーガン・マクニール（リンダ・ブレア）、10位「白雪姫」(Snow White and the Seven Dwarfs, 1937) 女王（声優 ルシル・ラバーン）
11位「ゴッド・ファーザー・パート2」(The Godfather Part II, 1974) マイケル・コルレオーネ（アル・パチーノ）、12位「時計仕掛けのオレンジ」(A Clockwork Orange, 1971) アレックス・デ・ラージ（マルコム・マクダウェル）、13位「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey, 1968) HAL9000（声優 ダグラス・レイン）、14位「エイリアン」(Alien, 1979) エイリアン（声優 ボラジ・バデショ）、15位「シンドラーのリスト」(Schindler's List, 1993) アモン・ゲート（レイフ・ファインズ）
16位「チャイナタウン」(Chinatown, 1974) ノア・クロス（ジョン・ヒューストン）、17位「ミザリー」(Misery, 1990) アニー・ウィルクス（キャシー・ベイツ）、18位「ジョーズ」(Jaws, 1975) 鮫、19位「戦艦バウンティ号の叛乱」(Mutiny on the Bounty, 1935) ブライ艦長（チャールズ・ロートン）、20位「バンビ」(Bambi, 1942) 男
21位「影なき狙撃者」(The Manchurian Candidate, 1962) ジョン・アイスリン夫人（アンジェラ・ランズベリー）、22位「ターミネーター」(The Terminator , 1984) ターミネーター（アーノルド・シュワルツェネッガー）、23位「イヴの総て」(All About Eve, 1950) イヴ・ハリントン（アン・バクスター）、24位「ウォール街」(Wall Street, 1987) ゴードン・ゲッコー（マイケル・ダグラス）、25位「シャイニング」(The Shining, 1980) ジャック・トランス（ジャック・ニコルソン）
26位「白熱」(White Heat, 1949) コディ・ジャレツ（ジェームズ・キャグニー）、27位「宇宙戦争」(War of the Worlds, 1953) 火星人、28位「恐怖の岬」(Cape Fear, 1962) マックス・キャディ（ロバート・ミッチャム）、29位「狩人の夜」(The Night of the Hunter, 1955) ハリー・パウエル牧師（ロバート・ミッチャム）、30位「タクシー・ドライバー」(Taxi Driver, 1976) トラビス・ビッケル（ロバート・デ・ニーロ）
31位「レベッカ」(Rebecca, 1940) ダンバース夫人（ジュデス・アンダーソン）、32位「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde, 1967) クライド・バロウ ＆ ボニー・パーカー（ウォーレン・ビーティ & フェイ・ダナウェイ）、33位「魔人ドラキュラ」(Dracula, 1931) ドラキュラ伯爵（ベラ・ルゴシ）、34位「マラソンマン」(Marathon Man, 1976) ドクター・ゼル（ローレンス・オリビエ）、35位「成功の甘き香り」(Sweet Smell of Success, 1957) J.J.ハンセッカー（バート・ランカスター）
36位「ブルー・ベルベット」(Blue Velvet, 1986) フランク・ブース（デニス・ホッパー）、37位「第三の男」(The Third Man, 1949) ハリー・ライム（オーソン・ウェルズ）、38位「犯罪王リコ」(Little Caesar, 1930) リコ・バンデロ（エドワード.G.ロビンソン）、39位「101匹わんちゃん大行進」(One Hundred and One Dalmatians, 1961) クルエラ・デ・ビル（声優 ベティ・ルー・ガーソン）、40位「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street, 1984) フレディ・クリューガー（ロバート・イングランド）
41位「愛と憎しみの伝説」(Mommie Dearest, 1981) ジョーン・クロフォード（フェイ・ダナウェイ）、42位「民衆の敵」(The Public Enemy, 1931) トム・パワーズ（ジェームズ・キャグニー）、43位「偽りの花園」(The Little Foxes, 1941) レジナ・ギデンス（ベティ・デイビス）、44位「何がジェーンに起こったか？」(What Ever Happened to Baby Jane?, 1962) ベイビー・ジェーン・ハドソン（ベティ・デイビス）、45位「バットマン」(Batman, 1989) ジョーカー（ジャック・ニコルソン）
46位「ダイ・ハード」(Die Hard, 1988) ハンス・グルーバー（アラン・リックマン）、47位「暗黒街の顔役」(Scarface, 1932) トニー・カモンテ（ポール・ムニ）、48位「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects, 1995) ロジャー・バーバル・キント（ケビン・スペイシー）、49位「007ゴールドフィンガー」(Goldfinger, 1964) オーリック・ゴールドフィンガー（ゲルト・フレーベ）、50位「トレーニング・デイ」(Training Day, 2001) アロンゾ・ハリス（デンゼル・ワシントン）
さて上記リストのなかで、英雄、悪党の両部門に選ばれたキャラクターが唯一あります。 アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターです。 「ターミネーター」は悪党部門で22位、「ターミネーター2」は英雄部門で48位に位置づけられました。
また、実在の英雄として「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラー（リーアム・ニーソン）が13位、「エリン・ブロコビッチ」のエリン・ブロコビッチ（ジュリア・ロバーツ）が31位等々でした。
人間以外の英雄には「名犬ラッシー」のラッシーが選ばれています。 また、人間以外の悪党では、「2001年宇宙の旅」のコンピューターHAL9000が13位、「ジョーズ」の鮫が18位などとなっています。 「2001年宇宙の旅」のコンピューターHAL9000って、ご存じでない方もありますが、その名前の由来。 「HAL」は「IBM」のひとつ先を行ってたんですよね、単にアルファベットのひとつ先ですが。
また同じ映画で「英雄」が二人も選ばれてるのもあります。 それは「スター・ウォーズ」のハン・ソロ船長（14位）とオビ・ワン・ケノービ（37位）です。 後者は英雄になるんでしょうかね？
しかし、こうして眺めてみると、アメリカ映画100年の歴史、結構知らない映画もいくらでもあるって感じです。 もちろん全部見た方もなかにはいらっしゃるかもしれません。 昔の映画でビデオ化されてないのもあるとも思いますがね。 それにしても「英雄」「悪党」のランクを見ると何だか感性の違いを見せつけられたような気もいたします。
06/08/2003