一世から二十数年最終の艇は六世にあたります。 最初の艇ノミ一世はYAMAHAのプロダクション・ボート25フィートでした（セール・ナンバー1755）。 小さくても立派なクルーザーでした。 ホーム・ポートは兵庫県西宮の関西ヨットクラブ（KYC）でした。
ノミ一世 西宮沖 二世はチタ製ダグラス・ピーターソン設計の30フィート。 本格的なセーリング・クルーザです。 数々のヨットレースに出場しました。
ノミ二世 徳島県椿泊 湾内にて 三世は同じくチタ製ダグラス・ピーターソン設計の42フィートでした（セールナンバー2235）。 この艇は帆走性能がよく本格的なオーシャン・レースに出場しました。 筆おろしはオレンジ・カップ・レースと鳥羽パール・レース、次は阿波踊りレースや別府洲本レースでした。 別府洲本レースはファースト・ホームで優勝、鳥羽パール・レースはセカンド・ホームで準優勝でした。 ファースト・ホームで優勝というのはゴルフで言えばベスグロ優勝みたいなものです。
ノミ三世 パールレース 遠州灘 その他のローカル・レースを総なめにした三世はいよいよ世界に飛び出しました。 先ずは建造にあたっての所期の目的であるトランパック・レースです。 その次は東京-グァム・レースでした。 その後ノミ号も六世になり、レースは引退し、もっぱらクルージング一本になりました。
○○艇長近影 ノミ六世 進水式 ノミ六世 お別れ会 09/27/1998
増補 01/26/2003
KYC（関西ヨットクラブ)創立20周年記念会報（1984年9月 発行 No.24）48頁-49頁 ○○艇長執筆記事を再掲載しました。
- おことわり -
原文は変なカタカナで書いてあってとても読みにくいので普通の表記に直してあります。 また明らかに間違いあるいは誤植と思われる箇所も訂正してあります。
「ノミ昨今」 専務理事 ノミ 3 ○○ ○
昭和50年4月「ノミ一世」進水、五月サントピア初航海友ガ島上陸うどんを喰らう。 帰路成山島にてオンザロック、海の怖さを知る。 六月、KYCレース初出場、マーク判らずタイムオーバー。 当時レース艇10艇に満たず年に6回、今昔の感あり。 「ノミ」常時タイムオーバー馬鹿にさる。 8月、高松に金比羅詣で、帰路台風に遭遇小豆島に避難す。 10月、大阪湾一周レース和泉沖にてデスマスト、再々馬鹿にさる。 此の頃より「二世」の検討を始む。
51年5月「ノミ二世」進水、クルー増える酒飲みばかりなり。 シーマン、古より酒飲みと相場の決まりなり。 また佳きかな。 8月我、地中海に旅立ちす。 クリストフォロ・コロンボも見れりと聞く古き灯台のある港町ジェノバ→バルセロナ→マジョリカ、此の島にてかの有名なショパンとジョルジュ・サンドが駆け落ちしたる僧院等見物す。 マジョルカよりチュニス、カルタゴの遺跡を廻る。 ハンニバルがスキピオに勝っておれば歴史も亦面白からずや。 チュニス→シシリー例の有名な結社マフィア発祥の地なり。 マフィアとは愛国の志士達の集まりと聞く。 古来よりシシリーは外国の蹂躙数多く住民が身を結束したのが始まりなり。 シシリーよりナポリ、ポンペイとヴェスビアスの定跡通り。 ラクリマ・クリスティ（キリストの涙）と言える白ワイン旨し、地酒と聞けり。 ナポリより出発地ジェノバに戻る一週間の航海なれど、旅は船が最高なり。 地中海に散在せるヨットクラブの素晴らしきこと既に諸氏の知る所なり。
52年8月、パールレース初参加。 唯々暑し。 飯びつは干割る。 帰路回航途上シイラ釣り上ぐ。 我、料理し、吐きに吐く。 クルーの同情全く無し。 10月、紀伊水道レース、吹きに吹く。 5人のクルーの内4人ダウン、何とか生還せり。 結果、最下位なり。 11月、洲本-五ヶ所湾レース出場、熊野灘寒く、乾し輝けり。 「ノミ三世」の構想練る。 トランパックレースに参加する為なり。
53年5月、「ノミ三世」進水。 オレンジカップレースの第何戦かに初ファーストホーム。 酒、大いに旨し。 7月、第20回パールレース120余艇中セカンドホーム。 遠州灘にて、NORC会長○○氏のコンテッサ六世とミーティング、「法螺貝」「太鼓」にて大騒ぎす。 クラス優勝。 ドンペリニョン '73 二本空にす。 返す刀で阿波踊りレース ファーストホーム。 9月、コテルテル進水。 「ノミ三世」より3トン軽し。 行く末憂慮さる。
54年1月、別府-洲本レース完全優勝。 進水後1年から2年、「ノミ三世」の優勝、ファーストホーム数知れず、あたかも、緒戦の連合艦隊の如し。 6月、米国に向かう。 トランパック参加の為なり。 米国の泊地、ロングビーチ ヨットクラブ、彼我の国力の差唯々唖然とするのみ。 ロサンジェルス-ホノルル間、2週間余りで渡る。 太平洋飽きることなし。 洋上にて「ロマネコンティ」「シャトーラフィット」「シュロスフォルラーツ」抜く。 同年8月、「コテルテル」「トーゴ」「月光」英仏海峡にて死に損なう。 テッドターナー、ファストネット・レース未曾有の記録にて優勝。 その言動により物議をかもす。 亦佳きかな。
55年2月、第2回ビッグボート・レース、サントピア にて開催。 第2戦ファースト・ホーム、ワインの空瓶山積みす。 3月我が盟友○○君、遠州灘にて落水。 合掌。 8月、土佐沖クルージング、「ヒラマサ」「カツオ」「アワビ」「モンラッシェ」と共に流し込む。
56年、レース「コテルテル」「トーゴ」の独壇場となる。 3月、関東相模湾にて、ビッグボート・レース「コテルテル」優勝。 3年振り関西勢、奪取。 8月、瀬戸内海クルージング。 本船往来甚だし。 されど、風景飽きること無し。 ○○真珠社長○○氏の肝煎りにて、海路より江田島上陸許可さる。 まさに感激の極みなり。 二等海佐の案内にて、各所見学す。 若きクルー達大いに感動せり。
57年8月、パンナム・クリッパー・レース「コテルテル」「トーゴ」出場、例年になく「ハワイ」の気象悪し、「コテルテル」に座乗許可さる。 3年前の「トランパック・レース」想い起こす。 9月、ドイツ-ライン地方旅行。 「リューデスハイム」にて76年「ラインワイン」仕込む。
58年4月我がKYCポイント・レースにて初事故。 ○○君落水。 合掌。 シーマン諸氏、落水すること勿れ。 8月、ビッグボートレースにて「ワッキー」優勝。 次回は東海地方にて開催の予定。 9月、「アメリカス・カップ」120余年振り米国より豪州に移る。 驕れる者久しからず。 「ノミ三世」走らず。 止んぬるかな。
されど、我、再々海に行かん。 楽しからずや。
02/07/1999
リンク 「単独世界一周ヨットボヘミアン」
