世界の帆船、過去にあった帆船、今でも存在する帆船の、主として帆による「形式」はさまざまです。 マストも二本から７本まであります。 マストが何本で帆がどういう形かということで様々な形式、名称があります。 ここではその一部を紹介します。 ひとつの形式でもそこに使われている帆の名称はすべて決まっています。 たくさんある帆一枚一枚に名前が付けられているのです。 帆だけではありません。 帆をひっぱるロープ（シートといいます）とか吊すロープ（ハリヤードといいます）一本一本にも細かいところまですべて名前が付けられているのです。 そうでないと「あれ」とか「それ」とか言っていたのでは通じませんものね。
マストが一本のものはいわゆる一般で言う「ヨット」、帆船形式上は「カッター」です。 ここではいわゆるマストが二本以上の「帆船」について説明します。 マストに付いている「帆」には「横帆」と「縦帆」の二種類があります。 何番目のマストが横帆で何番目のマストが縦帆であればどういう名前で呼ばれるかということが決まっているのです。 マストと帆の組み合わせは無限大あるわけではありません。 ごく少数の組み合わせに決まっています。
すべてのマストが「横帆」の帆船は「シップ」と呼ばれます。 ただしマストが二本の「シップ」は特別な呼び名があり「ブリッグ」といいます。 三本マスト・シップ、四本マスト・シップ、五本マスト・シップなどと呼ばれます。
一番後ろのマストだけが「縦帆」であとはすべて「横帆」の帆船は「バーク」と呼ばれます。 三本マスト・バーク、四本マスト・バーク、五本マスト・バークといった具合です。
一番前のマストだけが「横帆」であとはすべて「縦帆」の帆船は「バーケンチン」と呼ばれます。 三本マスト・バーケンチン、四本マスト・バーケンチン、五本マスト・バーケンチン、六本マスト・バーケンチンです。
「バーク」あるいは「バーケンチン」で、マストが二本の帆船。 すなわち前のマストが「横帆で」後ろのマストが「縦帆」の二本マストの帆船は「ブリガンチン」という特別な名前で呼ばれます。
すべてのマストが「縦帆」の帆船は「縦帆スクーナ」と呼ばれます。 二本マストから７本マストまであります。 二本マストの場合の特殊型として前のマストが高く後ろのマストが低い、すなわち前の帆が大きく、後ろの帆が小さい帆船はヨットの範疇に入り、「ケッチ」と呼ばれます。 この場合メインマストはスクーナと違って前の方です。 スクーナだったら後ろがメインマストです。
マストの呼び名も決まっていまして、シップとバークは同じ呼び方で、バーケンチンとスクーナも同じ呼び方です。 それぞれ一部のマストの名前が異なるだけでほとんどは同じです。
シップとバークの場合 ３本マスト フォア、メイン、ミズン ４本マスト フォア、メイン、ミズン、ジガー ５本マスト フォア、メイン、ミドル、ミズン、ジガー バーケンチンとスクーナの場合 ２本マスト フォア、メイン （二本マストのバーケンチンは ブリガンチンと呼ばれます） ３本マスト フォア、メイン、ミズン、 ４本マスト フォア、メイン、ミズン、スパンカー ５本マスト フォア、メイン、ミズン、ジガー、スパンカー ６本マスト フォア、メイン、ミズン、ジガー、ドライバー、スパンカー ７本マスト フォア、メイン、ミズン、ジガー、ドライバー、プッシャー、スパンカー （７本マストはスクーナのみ）
帆の名称も決まっています。 一例として横帆の場合の六枚帆の場合、メインマストの帆は下から順番にメインスル、メイン・ロワー・トップスル、メイン・アッパー・トップスル、メイン・ロワー・トゲルンスル、メイン・アッパー・トゲルンスル、メイン・ロイヤルと呼ばれます。 フォアマストの場合はメインがフォアに変わるだけであとは同じです。 五枚帆の場合はアッパーとロワーのトゲルンスルがゲルンスルとなります。 以下に帆船の模式図を示します。
それでは世界の帆船がどの形式であるのかいくつか挙げてみましょう。
グロリア コロンビア ３本マスト・バーク イーグル アメリカ ３本マスト・バーク ファン・セバスチャン・デルカーノ スペイン ４本マスト縦帆スクーナ エスメラルダ チリ ４本マスト・バーケンチン アメリゴ・ベスプッチ イタリア ３本マスト・シップ 日本丸、海王丸 日本 ４本マスト・バーク タヴァリシチ 旧ソ連 ３本マスト・バーク クリスチャン・ラディッヒ ノルウエー ３本マスト・シップ サグレス２ ポルトガル ３本マスト・バーク クルゼンシュテルン 旧ソ連 ４本マスト・バーク ダンマルク デンマーク ３本マスト・シップ デワルチ インドネシア ３本マスト・バーケンチン プロイセン ドイツ ５本マスト・シップ トマス・Ｗ・ローソン アメリカ合衆国 ７本マスト縦帆スクーナ
02/07/1999