朝日放送 平成13年5月18日放送より
おことわり：話し言葉と書き言葉はかなり異なります。 ここでは敢えてそのままの話し言葉を載せました。 文法的、理論的に変なところがありますが、話し言葉というものは、そんなものです。 誰でも文法通り、理路整然としゃべれるものではありません。 しかも生放送というシチュエーションでは。
Djyz アジア・ユーラシア大陸を横断じゃなくて一周なんだそうです。 ヨーロッパまで行って帰って来はったんです。 Ass ワーッ 一周！ Djyz えー、神戸にお住まいの乳海さんです。 乳海 おはようございます、本日はよろしくお願いします。 Djyz ようこそお越し下さいました。 56歳で会社を退職なさって、 乳海 そうなんですよ！ Djyz それで行かれて、 乳海 はい。 Djyz 五ヶ月かけて31ヶ国。 乳海 えーそうです、通過国はですね、31ヶ国。 Djyz 海が1,800Km、陸路33,000Km、鉄道バス乗り継ぎでおよそ5ヶ月。 乳海 そうですね。 昨年の9月15日から2月まで。 Djyz 今年の？ 乳海 そうなんですね、はあ。 Djyz 乳海さんは今回が初めてじゃなくて随分お若い頃にも？ 乳海 そうなんですよ、ちょうど26歳の時に、会社を24歳の時に会社をやめて26歳まで2年と3ヶ月、800日間ですね。 ヒッチハイク世界旅行をしたんですよ。 でー、その時の思い出がずっと忘れられなくって。 Djyz ほう、ほう。 乳海 あー、56歳までには一度、55歳までには一度、そのやめて再度こういう旅行をトライしてみたいと、 こう思ってたんですよ。 Djyz えー！ それがやっぱり24歳の時に一度なさっているという体験が。 乳海 これがやはり大きいですね！ Djyz それでその24歳で2年間かけておやりになったのと、この56歳でおやめになって、 乳海 はい。 Djyz 5ヶ月かけての31ヶ国というのは違うものですか。 乳海 やはり違いますね。 若いときの、その歴史が全く違いますし、共産圏の時ですし、今は非共産圏に なってますよね！ Djyz ほー！ 乳海 東欧にしても非常に変わっております。 Djyz はい。 乳海 物事の見方が、若いときは、いけいけドンドンで自分だけの視野で見ていくという感じになりましたけれど、 Djyz ほー！ 乳海 今度は社会生活にも入り、そして子供も育て、まあそういうところで、その各年代の方とちょっと深く はいれるということですか。 Djyz へえー！ 乳海 そういう感じで柔軟性というんですかね、イヤなことが多々あるんですけど、まーいいかと云うような 流せられるというところもあるかな、と感じましたけれど。 Djyz ざっとコースを教えていただけます？ 乳海 えーと、まず神戸から天津まで船で行きまして、 Djyz ほー、船、 乳海 フェリーでハイ。 それから、 Djyz フェリーでどれくらいかかるものですか？ 乳海 本来なら2日間で行けるんですけど、ちょうど台風にあたったものですから3日間ほどかかってしまたんですけれど。 それから北京に入って、それから西安の方に入りまして、でそれからタクラマカン砂漠、パミール高原。 Djyz これは何で？ 乳海 みな汽車とバス、ローカル・バスを乗り継いで行くんです。 Djyz ほー！ 乳海 だからまあ一日乗るときもあるし二日間汽車にのるときもありますし、 Djyz ほー！ タクラマカン砂漠というのは列車が走ってるんですか？ 乳海 ええ走っております。 非常に良い列車が走っております。 Djyz 敦煌の方も通ってずっと南の方へ？ 乳海 はい、本当に良い列車が走っています。 パミール高原に入って、パミール高原から印パ国境のあたりですね、 インドとパキスタンの国境にカラコルム・ハイウエーと云うのが走ってるんですけど、 Djyz へー！ 乳海 これはもうおよそ4,700mの峠を越えて行くんです。 Djyz 4,700mの高さで？ 乳海 高さ、はい、バスで。 Djyz あがりますの？ （笑） 乳海 なんとかあがって、まあ例えばちょっと話が飛びますけど、崖崩れがあったり、 Djyz ほー！ 乳海 そういうところで3時間、4時間待ったり、まあそんなような事しながら、 Djyz へー！ 乳海 印パ国境に入って、そしてパキスタンの首都カラチのラフォールまで降りたんですけど、どうしても イランのビザが取れなくて。 （注：パキスタンの首都はイスラマバード） Djyz ほー！ 乳海 それで飛行機で湾岸3ヶ国（ペルシャ湾）をちょちょっと廻った後、イスタンブールに入りまして、 Djyz 飛んでイスタンブールですね（笑）、 乳海 さすがですね（笑） Djyz もうそれしか知らない、 乳海 イスタンブールからバクーと云うところなんですけど、アゼルバイジャン、これをどうしても 見たかった、行きたかったものですから、それでアゼルバイジャンから2,750Km、あのイスタンブール まで戻りました。 Djyz ほー！ 乳海 そしてそれから、どういうんですか、ギリシャとかサラエボとか今内戦が起こっておりますね、 Djyz うんうん、 乳海 あのあたりをずっと廻りまして、それから東欧を廻ってバルト三国ですね、エストニアとかラトビア そういうところを廻り、それからサンクトペテルブルグに行きまして、北極の一番果ての、その ムルマンスクと云うところなんですけど、こないだ潜水艦が沈んだところですね、 Djyz はあ、はあ。 乳海 そこからモスクワに入って、そして7日間シベリア鉄道で北京までと（笑）、 Djyz はあ、はあ。 乳海 それでちょうど5ヶ月と10日間だったんですけど。 Djyz はあ！ ほぼ一周ですね。 これは24歳の時に通られたコースなんですか？ 乳海 いや、全然行ってないコースですね。 Djyz あっ、違うんですか？ 乳海 24歳の時はそこのコースをほとんど通ることがなかったんですよね。 サウス・アメリカと北米大陸ですね。 あちらとかヨーロッパとか色々行ったんですけれど、ちょっと違うコースだったんです今回は。 Djyz こまかいことはちょっと後からうかがいますけれど、ざーっと全体を通してこの5ヶ月の一人旅、 達成なさった瞬間にどういう感慨と思ってと云うのか、 乳海 やはりですね、いつもそうなんですけれど、旅を終わると寂しさが先ず来るんですね、 あーもうこれでこの旅が終わったのかと、と云うのが一つ感じられますね。 それとそれから、 あーよくやったなあ、よく達成ができたなあと、一人で、色んな事があったけれどなあ、と云うのが 二つ目ですね。 Djyz 会社やめてよかったなあとか、 乳海 あー、 Djyz 家族の反対もあったしとか、周りの人の反対もあったのにとか、なかったんですか？ 乳海 やっぱりありますけれど、一人旅しますと常に寂しさが入ってくるんですよね、躁鬱が。 鬱の時にやはり、今、同僚とかどうしてるとか、家族どうしてるかな、とかね、そういう様なことを よく考えるんですけどね。 そういうようなときには、鬱になるとまたすぐ旅立ちって云うんですか 奥へ奥へと入って行くとそれが元に戻って陽気になっていくと、それの繰り返し（笑）。 Djyz なるほどねー、 乳海 かえって町に入ると鬱っぽくなりましてね、また地方のかわったところで、また出会いが深くあるん ですよ、地方に行くとね。 Djyz ふーん、 乳海 すると気が和むとかですね、そういうような事が多いですよね。 Djyz 人生ですよね、あはははは。 乳海 いやいや、まーすべて人生ですけれど、 Djyz そうですね、今回は56歳で退職なさってユーラシア大陸をずーっと南からヨーロッパ廻って一周 なさった乳海さんにお話を伺っております。Djyz 58歳つまり私と同年で5ヶ月かけてユーラシア大陸を一周してこられたという神戸の乳海さんに 今朝はお話をうかがっております。 あのー、まあ24歳の時と今回と二回その大陸一周とか横断とかなさってるのが、御自分は孤独に なったり、躁鬱になったりだと思うんですが、ご家族は？ 乳海 子供は男二人ですでに独立しておりますし、そして家内には30年間ずっと言い続けておりますので、 いわゆる必ず55,6歳になったら行くでと。 Djyz ほー！ 乳海 ひとつお願いするぞと云うことで、ある程度仕方がないなと（笑）、云うことと思ってるんですけれど、 Djyz 快く？ 乳海 え、まあ快く、内心は知りませんけれど。 Djyz 夫婦喧嘩もなく？ 乳海 えー、まったくありませんけれど（笑）。 Djyz あの、そもそも乳海さんが定年を前にしてね、こういう決断をなさるってのは僕、同年ながら僕は多分 家族も説得できんでしょうし、自分で決断もようせんと思うので、 乳海 はい、 Djyz そのへんをちょっと何故にまた？ と思うんですけれど、 乳海 あの、ひとつのポイントって云うのはですね、人生まあ皆70歳とか74歳とか云うのはあくまでも、 いつ死ぬかと云うことですよね、平均年齢ですよね、 Djyz しかしいつ動けるかって云うのは、 乳海 これまた別の問題で、これまた個人差が大きい、 Djyz はい、 乳海 それでまあ私の旅はやはり60を越えてはちょっと難しいかもわからない、 Djyz はー、 乳海 あるいは60を越えてひょっとしたら、 Djyz えー、 乳海 どうなってるか判らない、まー私にとっては目的ですのでどういうんですか、ユーラシア大陸、 アフリカをまた旅したいと云うのは！ これをどうしても完成するには、その3年間、時間を買ったと云う感じなんですね。 本来なら残っている方がそれはそれなりに社会的にステイタスも残りますし、年金も残りますし、 まあひょっとしたらそれから56歳あるいはこの旅をしなかったら、いつ出来るかどうかはっきり 判らないことですよね。 Djyz はー！ 乳海 不確定要素ですから、だから確定的に早くしておこうと、 Djyz ほー！ 乳海 と云うことで思い切ったわけなんです。 Djyz 3年間時間を買ったぞと、 乳海 はい、時間を買ったと、高い時間ですけれど、人生一回しかないんじゃないかと云うことで。 Djyz ふーん！ 乳海 まあ家族には色々と迷惑をかけてるかもわからないけれど、 Djyz はー、 乳海 はい。 Djyz それで、その町中では孤独感を感じ、また草原地帯とかいなかの人たちと、お会いになって ほのぼのとした出会いがあり、の繰り返し、 乳海 はい、そうですね。 Djyz で、さっきどうしても行きたい東欧の国といわれましたが、 乳海 はいはい。 Djyz 東欧の国はまあその自由になって11年から12年ですが、89年ですから、ずいぶんあちこち 変わってるんですか？ 乳海 あの非常に、私が24歳25歳とくにチェコスロバキア、チェコですね、行ったのは「プラハの春」の すぐ後の時だったんで、 Djyz はい。 乳海 ロシア兵がずっと町を囲んでた、戦車がずっと囲んで悲嘆にくれていたんですが、今やその観光都市 大都市って云うんですか、変化してしまって、 Djyz もともときれいな所ですからね、 乳海 と云う国もあります。 非常によくなりつつある国も、それからルーマニアのように悪くなる国、 いわゆる秩序が完全に破壊していると云う国ですね。 Djyz 完全に破壊しているというのは例えばどういう？ 乳海 例えば面白いのは、その、向こうの国鉄に乗りますよね、 Djyz はい、 乳海 すると、その車掌と直接にネゴをしてその金額ですね（笑）、 Djyz 運賃は車掌との交渉？ 乳海 えー、運賃の交渉はできるんです。 例えば短い距離は別ですけれど、長距離5時間乗ると、 Djyz はい、 乳海 1,500円としますよね、あるいは2,000円とすると、まあ裏で1,000円にしてくれないか？と云う ようなことも成立するわけですよ。 Djyz えー！ 乳海 これはまあ私自身学生と乗っておりまして、そこまでする、もともと運賃が安いものですから、 我々日本人にとって、しかし彼らにとっては非常に高いものですから、そういうネゴがあると。 それから夜、国境を越えますよね、 Djyz あの金を請求されると、 乳海 ジョージア（グルジア）と云う国があるんですけど、 Djyz ほー、 乳海 ジョージアからアゼルバイジャンにカスピ海に行くときに夜行列車に乗ったんですけれど、 その時はやはり銃を持った軍隊のような、あー、税関員ですね、その部屋に入ってくるんですよ、 向こうは部屋が、各コンパートメントになってるんです、一部屋一部屋になっています。 そこに私は一人しか乗っていなかったんで、すると500ドルよこせとか、それをやはり値切って いかないといけないんですよ（笑）。 Djyz なるほど！ 交渉にして？ 500ドルを！ 乳海 で、まあ向こうに脅かされ、私も向こうを脅すと云う形ですね、まあそんなようなことをして くぐって行かなければならないと。 先ほどの話に戻りますけど、東欧というのは非常に強弱が、ドイツ西側に近い方は非常に 経済的に豊かである、遠いほどしんどいという感じですね。 Djyz はー、10年以上経ってもまだまだという、 乳海 まだ悪くなるという、特にモラルの退廃というのが感じられましたですね。 Djyz 残念ですよね、 乳海 はい。 Djyz で、帰ってこられて、かかった費用というのはざっとどれくらい？ 乳海 だいたい100万前後なんです。 Djyz それぐらいで行けますの？ あー、そうなんですか。 乳海 はい、それも交通費も全部入れて。 それとホテルはだいたい中級のホテルで廻って行った ほうが面白いんですね。 あの安全であれば良いと云うところですね、 Djyz ふーん、 乳海 大ホテルに入るとコミュニケーションがないんで、 Djyz あー、 乳海 向こうの従業員と、 Djyz なるほど、 乳海 そこで色んなホテルの中でアレンジされるということで面白いという面もあるんですけれど。 Djyz こんだけ廻っていらしてね、24歳と今回と、住んでもいいなあと思われた国はどこですか？ 乳海 住んでもいいなあという国は、どういうんですかね、旅行していい国と住んでもいいなあという 国とはまた違うと思うんですよね。 まあほんとうに生活してもいいなあと思う国は、 私もアメリカ8年間いましたけれど、アメリカとかですね、あるいはオーストラリアとか。 そういう所は住んでもいいなと思います。 けれど旅行するという意味においては、やはり サウス・アメリカ、その明るさというかあるいは音楽とか日本人によく合うって云うんですかね。 あの、そして人間も非常に親しみをもって話しをしてくれるというところですね。 Djyz で、会社をおやめになりましたよね、今はどうやって生活をなさっておられますか？ 乳海 今はほとんどいままでの蓄えと、それから私自身は今、和田山におりまして、家内は神戸の方に いるんですけれど、家族は、私は和田山の方で日々どういうんですか、雨が降れば本を読み、 Djyz 晴耕雨読。 乳海 そういうことです。 Djyz 耕して何か作ってはるんですか？ 乳海 えー、まあ自分で食べられるくらいのものは、約250坪くらいあるんで、 Djyz へえー！ 乳海 それで畑を作っております。 Djyz 明日の暮らしと農業を考えておられるんですね、 乳海 そこまでは（笑）。 Djyz 今は何を作っておられます？ 乳海 今はこないだジャガイモを植えたところで、それからハーブとか、 Djyz ジャガイモはぼちぼちもう花が咲いてきますね、 乳海 え、まあ和田山はちょっと寒いんで（笑）、 Djyz あー、これから、 乳海 あと二週間くらいです。 Djyz なるほどなー、あこがれるなあ。 いやいやどうも今日はありがとうございました。05/20/2001