季節も巡り、早お彼岸ですか、秋の。 暑さ寒さも彼岸までとは、よく云ったもの。 すばらしい天気です。 抜けるような青空、少しひんやりした空気。 絶好のヨット日和と云うのに、三連休と云うのに、当初予定のクルージングにも行かないとは。 みんなそれぞれ野暮用がある模様、ヨットなんかより大事な大事な野暮用がある模様。 そりゃまあ人の勝手ですがね、山で芝刈りしようが、土掘りしようが。
と云うことで、いつもヨットに情熱を傾けてると云うか、ヨットが第一のと云うか、要するに他にすることがないと云った方が正しい、いつもの三人がヨットに向かいます。 誤航様、鼠海、無牙です。 無牙は久しぶり、二週間は会ってません。 クーバに引き続き、ボルネオはカリマンタン、コタ・キナバル方面に、頭坊様たちと旅していた模様。 ちょうど「NYでの大事件」のさなかです。 無牙の会社ではあの期間、誰が何処へ、いずこの海外に旅行してるとか確認を取った模様。 おかげで無牙が休み明けで出社したところ、知らないはずの人たちまでにも、ボルネオ行（こう）が知れ渡っていたことに、唖然とした模様。 でもね、こんどの旅行はクーバのように、旅行社の段取りがちゃんとキッチリ出来てなかった模様です。 行った人たち皆おかんむりの模様です。
誤航様一家は「ういまご」誕生でもちきりです。 やっとお名前が決まった模様です。 最初は誤航様、「航」（わたる）に、したかったとか、自分の息子でもないくせに。 でもこの名前、船乗りさんとか飛行機乗りさんとか、あるいはそれらに憧れた人たちが自分の息子によく付けるネームで、少しありふれています。 結局決まった名前は、某此花区の「USJ」の、安治川をはさんで向かい側にある、大アクアリウムに住まいする、ホエール・シャークと同じ名前です。 良い名前です、オーシャンではありません、シーです、誤航様もとっても気に入っている名前です。 しかし誤航様、女婿（じょせい）を差し置いて、孫にかまってばかりいるものですから、「月二つ」の娘に叱られます。 「お父さんの子じゃないのよ」
ハーバーにそろそろ到着です。 今日はこの三人だけかいなと思っていると、遅海から携帯です。 緩海からも電話です。 とりあえず五人集まりました。 遅海が道恐を呼び出します。 さっそくキャビンでビールです。 途中仕入れたシメサバをつまみます、うんなかなか行けるじゃありませんか、出来合いにしては。 お昼は、久しぶりにナベ料理と云うことになっています。 もう秋ですからね、ナベの季節ですからね。 タラ、焼きアナゴ、ブラック・タイガー、鶏などのナベ、後でうどんが入ります。
音楽が欲しいな、しかし備え付けのオーディオ装置のCDプレイヤーがどうも具合が悪そうです。 オーディオは得意とおっしゃった誤航様でも直りません。 せっかくクーバの「デル・ボデギータ・デル・メディオ」で無牙がゲットしたCDが聴けないじゃありませんか、どもならんな、この何は。 遅海の脳味噌のようにスポンジ風になって来たんでしょうか、このCDプレイヤーの中枢部分。
さあナベが始まります。 これくらいの少人数ですと、ナベもゆっくり食べられてうれしいな。 誤航様はエビがあまりお好きじゃナイ模様。 食べないのかと思ってるとそうでもなさそうです。 要するにエビのカラを剥（む）くのがめんどうな御様子です。 こんなの口にそのまま入れて、上手に噛（か）み分けて出せば終（しま）いですのにねえ。 最期に名古屋方面風のうどんを入れて仕上げです。 満腹です、さっと片づけて出航です。
しかし、何回も云いますが今日は良い天気、抜けるような青空です。 クーバの空のように、雲一つありません。 秋晴れです。 しかも風がかなり吹いてるのに、波は殆ど全くありません。 やはり大阪湾は大きな湖でしょうか、セーリングには理想的。 しかし出航すればいきなりオーシャン、という所で鍛えられたセーラーから比べるとひ弱な、軟弱なヨット乗りになるでしょうか、大阪湾の、瀬戸内の人たちは。 波浪に慣れてない、すぐシー・シックネスに襲われるような。 まあしかし波が殆ど無いのは結構なことですね、艇にとっては。
船底は先日のプロの仕事のおかげでツルツルですから、よく滑る。 リーチングでも8ノットくらいさっと出ます。 風はかなり吹いています。 風力計は、ぶっこわれていますので、マスト・トップの風車は回らないので、正確な風力は判りません。 ホオに感じる加減では、25ノットくらいです。 ウインド・ア・ビームではそうでもありませんが、リーチングではかなりヒールします。 目一杯のぼりますとよけいに傾きます。 コクピットに腰掛けていても風下側へズリ落ちそうになります。 風上側からは曳き波がクルーの後ろに見えるようになります。
あんまりヒールすると抵抗にもなって艇速がのびません。 リーフすることにしました、縮帆です。 先ずメインスルをワン・ポイント・リーフです。 メン・ハリを少しダウンさせ、ブームのフックに一番目のアイを引っかけます。 クルー・アウト・ホールを引き込んで、メインスルをブームに折り畳み、雑索（ざっさく）で何カ所か固定してできあがりです。
ジブ・セールも少し引き込みますと、ヒールは小さくなり、艇速もグッと伸び始めます。 いいじゃありませんか、快走します。 風は移動性の大陸の高気圧からの吹きだしでしょうか、北よりの腰のある力強い風です。 あっという間に防波堤を越え遥か沖に出てしまいます。 このまま明石海峡をめざせばあっという間に着きそうです。 今日は帰らずに岩屋にでも行こうかと冗談がでます。
おやっ、レース艇が併走しています。 40フィートくらいのレース艇です。 沢山クルーが乗っています。 なんだかこのNOMIと競っている模様。 しゃーないな、クルージング艇で受けて立ちましょう。 なかなかこのNOMIも頑張ります。 船底が綺麗なのと、強風のおかげで競（せ）り負けはしていません。 突然レース艇タックしてかぶせてきます。 仕方ないのでこちらもタックです。 昔取った杵柄（きねづか）でもありませんが、レースをやっていた頃の思い出がよみがえります。 しかししだいに相手側が先行していきます。 誤航様、ミート目やなあとか、のたまっていましたが、ゼンゼンです。 はるか先を行ってしまいました。 まーしゃーないわなあ、あっちはレース艇、こっちはクルージング艇。 競う方が間違っていると云うものです。
しかしすばらしい帆走を見せてくれます、この艇も。 すばらしい風、すばらしい天気、すばらしい海。 今日は久しぶりに大満足です。 来なかった人たち気の毒です。 興奮の余韻を残して帰港します。 あー楽しかったね、今日はこのまま帰るのももったいない。 どうせ明日は休みだし、しかし用事のある人もいるんですが、キャビンで夕食を摂って、それから考えようか、と云うことに相成りました。
さっさと片付け、買い出しに出かけます。 もう辺りは暗くなり始めています。 秋の日はつるべ落としとか云うのにはまだまだですが、明るい時間が今日あたりから暗い時間より短くなっていきます。 さあ今日は久々の強風でのセーリングで興奮したことですし、奢（おご）ることにしました。 松茸入りのすき焼きでもしようかと無牙の提案です。 一も二もなく皆賛成です。 せっかくだからお肉も良いのにしましょうか。 お肉はもちろん関西ですから牛肉です、豚肉ではありません。 お肉は某芦屋方面にある、某関東方面の球団定宿（じょうやど）のお肉屋さんで仕入れましょう。 松茸その他は同駅前地下の「山と海」でそろえます。
うーんすき焼きだから、どのお肉にしましょうか。 店のおじさん100g 600円くらいのを勧めてくれますが、イマイチです。 なんだか美味しそうな「肩ロース」が並んでます。 えーい、とばかりに、某京都のきよみず方面の舞台から無牙が飛び降ります。 この100g 1,000円、いや1,200円のヤツ、1キロ、いや1.5キロ 下さいな。 へーい毎度と、おじさんの顔がほころびます。 マッタケはこの季節、国産モノはかなり高いので、もちろん最盛期でも高いので、とても手が出ません。 某半島の北にある国からの輸入品、虫食いでないところを見せるため、半分に断ち割ってディスプレイしてありまするのを見つくろって、なっ何と8本も買ってしまいます。 もう何ちゅう贅沢ですか、罰（ばち）が当たりませんように。
飲み物、氷を仕入れて艇に戻ります。 ギャレーで野菜その他の準備が始まります。 キャビンでは昼に引き続いてまたまたナベの準備です。 鍋物は段取りが簡単です。 どちらかと云えば手抜き料理。 しかし親しい仲間と食べるのには最適です。 さあ関西風すき焼きの始まりです。 良いお肉ですから、そんなにこってり味付けは不要です。 肉だけ、他には何も入れずにナベに入れ、焼きます。 少しだけ砂糖と醤油を振りかけます。 お酒も少々垂らします。 少し赤みが残ってるヤツを生玉子に付けて頬（ほお）ばります。 うーん、とろけるような美味しさです。 罰当たりです、こんな上等のお肉を惜しげもなく1.5キロも。
しかし味付けが薄いので、いくらでも入ります。 瞬く間に、まったく肉だけのすき焼きで、6人で肉を半分以上、食べてしまいます。 やおら松茸を入れてお肉とからめていただきます。 うーん、幸せだなあ、来てない人たち可哀相に。 さあ、お肉が残り少なくなってから、野菜、糸こんにゃく、焼き豆腐その他を入れ、普通のすき焼きモードに突入です。 あー喰った喰った、おなかがはち切れます。 しかし鼠海は前日にも、某知る人ぞ知る美味しい焼き肉屋さんで、めっちゃ脂のサシの入ったロースを生で、焼き肉で、さんざんいただいたと云うのに、イヤシいな。 高脂血症、高コレステロール血症になりそうです。 またまた体重が増えるでしょう。 秋の夜はしだいに更けてまいります。
09/22/2001